【タクティクス講座4編、《スタートパートⅡ》】
《スタートのポジション取り》
それではどこからスタートするか把握したところで、次は今から走るコースをチェッ
クしましょう。
まず風上のマークがどこにあるか確認、そしてサイドマーク位置の確認、下マークの確認、
全てのコースを回航するイメージを頭に入れておきます。
さらに風上マークの傾きも考えられます。スタートラインに対し風上艇と風下艇のど
ちらの艇からマークが近いか確認して下さい。
基本的には最短距離を走るのが一番早いので、前回述べた風の振れを頭に入れて再度
スタート位置を見直して下さい。そうです。未だ重要なことを言い忘れていました。

この時風上マーク付近に入ってくるブローの入り方もチェックして頭に入れておいて下さいね。
さてスタート3分前(6分-3分カウント)ぐらいになりました。もう既にスタート
位置は決めてあるはずです。
そこには良いスタートしようと、沢山のセイラーが集まってきます。あなたのボード
が少しでも下側に流されれば直ぐに今居た風上のポジションは取られてしまいます。
そして、風上艇に風を取られてあなたは風をセイルに入れることが出来なくなり、
そうこうしているうちにスタートホーンが・・・なんて結末にならないように!
まずスタートライン上で同じ位置をキープ出来るように努力して下さい。
裏風入れたり、少し上ったり、バックしたりして、その位置をキープしましょう。
強風時、あるいわスラロームレーシーグボードでは、スピード出したり、押さえたり
(セイルの風を逃がす)してライン上の位置をキープして下さい。
また、強風でオーバーセイルに陥った時等は、スタート位置のキープがかなり難し
くなりますので、なるべくブローの切れた時を狙って良い位置に移動して下さい。

次にここで発生するルールの説明をしましょう。
裏風入れてバックすることは、ルール違反なので自分がする場合は大ッピラな行為を
しないようにバレナイようにやって下さい。たとえばヨロケタ振りしてバックするとか!
ですから自分の前方のセイラーがバックしてきたら、「バックしないで下さい」
といって下さい。それでも止めてくれない場合は「抗議しますよ。」っと主張して下さい。
口頭で主張することはレースのルール上とても大切なことですから。
さらに、ルールの中には下(シモ)有理という権利が発生します。風上艇は風下艇を避
けなければならない!っというルールです。
このルールはとても微妙で、風下艇が自分のマストより前方にオーバーラップ(重な
っている状態)している時に発生するルールです。
自艇が風下の場合は「シモ~」っと言いながらラフして風上に切り上がる行為のことですが、
ライン上より下がってしまって風上艇の下にいる時は、「シモシモ」っと言いながら
ライン上に復帰して下さい。

そしてもう一つ、自分の艇にはルームと言う権利も発生してきます。それは自艇のブ
ームが回転する幅のエリアは自分のエリアなのです。
ですから、絶対に自艇の下に他のセイラーが来た場合「ルームです。」と主張して下さい。
無理でしたらブームを思いっきり出して防御して下さい。それは権利ですから。
ここに、風下有理、自分のルーム要求、で他艇と問題が発生することもありますが、
そこは経験して雰囲気を理解して下さい。

このようにして自分のスタート位置をキープしていくのですが、最も気を付けなけれ
ばいけないこと!それは自分の風下に他艇を入れないことです。
スタート5秒くらい前には自分の風下を十分空けておくことです。自分のルームが十
分あることでスタートダッシュが出来るからです。
そのスタートダッシュ出来るか出来ないか、数秒後には何百メートルという差になっ
て現れてきますから。

それから、エイト、ダウンスラロームレースにおいてのスタートですが、殆ど変わり
はありません。
その場合、ただライン上には待機しません。手前から走り込みスタートするのですが、
そのスタートを切る前のポジション取りの行為は同じと考えて下さい。
スラーロームレースに限って、走り込んでスタートを切る感じはこんな感じに似てます!
車に乗ってて信号が赤から青になる瞬間に横断歩道のラインをジャストで、しかも速
度をなるべく落とさずに切る感覚です。歩行者用の点滅が予告信号と考えて下さい?

ま~それはさて置き・・・
さてカウントダウン3秒前です・・・(次回はいよいよ【スタート】(あっリコールか
な!)です。

*時には、こんなタクティクスも
たとえば、風下艇側からスタートするのが絶対に良いと思って早くからその位置に待
機していたら有理不利がバレバレですよね。そうなればそこに沢山のセイラーが集ま
って、大変スタートし難くなってくるのは当然です。
そのように早めにスタートラインを流してしまうと、他のセイラーも一緒に着いて来て
有理な側が混み合いスタートがし難くなる場合がよく見受けられます。なるべく避けましょう。
自分が完璧にスタート位置を把握している場合、僕はこのような方法を使ったことも
あります。スタート位置とは反対の位置でとりあえずスタートする意志を見せておきます。
たとえば風下有理でしたら風上のポジションに待機する振りをするのです。
そして、スタート1分ぐらいに全速力で風下ラインに向かってジャストスタート!っと
いう方法です。このような方法は誰にも邪魔されずにすっきりとスタート出来ますよ。
このように常にレースでは何通りものタクティクスが存在するのですよ。
その時その状況でベストなタクティクスを見つけ出してみては如何でしょうか。




【87年ハイウインド10月号の記事より。】
87年富山県で開催されたウインドサーファー全日本選手権でのスタート風景。
ボードもセイルも全く同じワンデザインの競技。勝つ為にはタクティクスが最も必要
とされる。
エントリー数は各地で予選を勝ち抜いた180名。
4日間で7レース。この時コースレーシングで優勝を手にする。